精神分裂病患者(統合失調症恵者)における予後予測のためあ臨床心理学的資料を得るために、患者に対し入院後の3つの異なる時期に描画テスト(バウム・テスト)を実施した。実施時期は入院後の比較的安定した時期を1回目とし、2回目はそれより1ヵ月後、3回目はさらに3ヵ月後に実施した。通常、6ヶ月が一応の治療の目安になり、この期間の治療がその後の経過に大きな影響を与えると考えられているために、それら3回の描画は、入院後6ヵ月以内におこなわれるように設定した。研究への参加者は40名の入院患者であった。患者には検査をおこなう趣旨(改善の傾向を把握し治療に役立てるため)を説明し同意を得た。得られた計120枚の描画は心理学科の学生28名が先行研究(横田ほか、2002)で使用した評価尺度を使用して評価した。3回それぞれの描画時期ごとに尺度の因子分析を行ったところ、先行研究と同じ3因子、活動性、写実性、非統合性が安定して得られた。このことは、描画特徴は、入院後の6ヶ月の間、同一の因子構造をもった評価尺度で評価可能なことを示している。これまでの研究では発症から医療機関への受診までの期間が予後に影響するとの知見が報告されている。このことを明らかにするために発症後から入院までの期間を短期(6ヶ月未満)と長期(6ヶ月以上)に分け、上記描画特徴の推移に違いがみられるかどうかを今後検討する予定である、現在研究参加者の主治医に依頼し、受診までの期間を調査している。さらに今後、上記の尺度を使用し、参加者を治療経過(入院・退院・退院後再入院)にしたがって群分けし、描画特徴の経過的差異を調べ、描画テストによる予後予測指標を明らかにする。
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