研究概要 |
精神分裂病患者38名について入院後3回描画を求めた。1回目は入院直後比較的安定した時期、2回目はそれから約1ヶ月後、3回目は2回目からほぼ3ヵ月後であった。これら計114枚の描画を、大学生28名(男性16名、女性12名:平均年齢26.1歳)が12項目の評定尺度を使用して評価した。 12項目の評定尺度では3つの因子、活動性、写実性、非整合性が得られた(それぞれのクロンバックのαは0.786,0.730,0.766)。そこで活動性、写実性、非整合性の3因子ごとに描画特徴を得点化し、それらの得点を使用し、1回目の描画特徴が2回目のそれを、そして1回目と2回目の描画特徴が3回目のそれを予測できるかどうかフォワード・セレクション法による回帰分析をおこなった。 その結果、描画の安定した予測指標としては写実性が得られた。すなわち2回目の写実性は1回目のそれによって予測され、3回目の写実性は2回目のそれによって予測されていた。これに対し、活動性では、2回目のものは1回目のものによって予測されたが、3回目のものも1回目のものによって予測されていた。非整合性に関しては、3回目のものが2回目のものに予測されていたが、2回目のものは先行のものによって予測されてはいなかった。 以上のように、描画特徴は、3つの特徴に分けられ、それらの特徴によって、予測のされ方が異なっていた。 さらに患者が初発か再発か、また入院までの期間が6ヵ月以内かそれ以上かによって分け、同様な予測の検討をおこなった。その結果、初発が6ヶ月以上のものでは、2回目、3回目の活動性を先行する描画の写実性が、6ヵ月以内のものあるいは再発のものではいずれも2回目、3回目の活動性を先行する活動性が予測していた。写実性、非整合性に関しては、そのような差異はみられていない。このことは発症後6ヶ月以上での入院では描画特徴を予測しにくくすることを示している。
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