平成15年度も前年度から継続し、生後9か月から30か月児を対象に数種類のジョイント・アテンション場面を設定して、その実験場面で見られるジョイント・アテンション行動の観察を縦/横断的に実施してきた。この実験場面の一部を使用し、不在対象(absent referent)に対する表象水準のジョイント・アテンション行動の分析が行われた。使用された場面は、母親に「過去」か「未来」に生じた出来事を話題に子どもとお話しをしてもらう場面である。その結果、「過去」場面の方が「未来」場面より、表象水準のジョイント・アテンション行動は早く登場することがわかった。また、表象水準での追跡的ジョイント・アテンション行動は生後21か月頃から、また誘導的ジョイント・アテンション行動は27か月頃から活発化するデータが得られた。さらに、ジョイント・アテンション行動を検討する新たな場面として、抗アフォーダンス模倣行動場面を導入した。この場面では、手でボタンを押すと、キャラクターの乗ったプレートが回転するのが中で見える玩具を使用し、実験者が額でボタンを押す例示行動を示した。そして、その直後に子どもが見せる反応を分析した。その結果、生徒15か月頃から口でボタンを押す「口模倣」が始まり、21か月以降になると額で押す「額模倣」が出現し、抗アフォーダンス模倣が確認された。こうした自らの実験データと他の実験データから、ジョイント・アテンションの発達階層論の構築を目指し、「プレ・ジョイント・アテンション」「対面的ジョイント・アテンション」「支持的ジョイント・アテンション」「意図共有的ジョイント・アテンション」「シンボル共有的ジョイント・アテンション」の5階層論を提案した著書「共同注意-新生児から2歳6か月までの発達過程-」を上梓した。
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