平成14・15年度において、9〜30か月児とその母親を対象にジョイント・アテンション行動の実験観察を行い、各種のデータを蓄積し分析を行ってきた。こうしたデータに基づき、誕生から生後30か月までのジョイント・アテンション行動の発達を理論化し、「ジョイント・アテンションの5発達階層論」として提案した。平成16年度においては、この5つの発達階層の内容をさらに詳細に明らかにする分析作業を継続した。第1に、5種類のジョイント・アテンション場面と子どもの情動調整の関係を分析した。18か月頃の子どもの情動調整は母親とのジョイント・アテンション関係によって影響されることが示された。第2に、母子間での「抱き」と子どものジョイント・アテンションの関係を分析した。12ヶ月頃になると、抱かれた子どもは、母親の顔を見ないままジョイント・アテンション関係を維持する体制が強くなるデータが得られている。第3に、新奇な対象物に母親の注意を誘導するが、母親がその対象に気づかない素振りをして見せた後に、母親が気づく場面でのジョイント・アテンション行動を分析した結果、9か月児はジョイント・アテンション行動を回復する持続性に欠けることが明らかになった。第4に、視覚刺激と聴覚刺激に対する子どものジョイント・アテンション行動の分析を試みた。その結果、刺激対象に気づかない母親を誘導するジョイント・アテンション行動の場合と同様に、母親が対象物に気づいた場面でも、聴覚刺激に対するジョイント・アテンション行動は視覚刺激に対する場合より、約半年ほど遅れるデータが得られている。
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