研究概要 |
本年度(H14)の目的は,「無我」と呼ばれている状態と関連が深い「自観法」とよばれる技法の効果を検討することであった。この技法は、現象に対する評価・判断を停止するメタ認知を用いている点で、これまでの欧米のセルフ・モデリング技法とは一線を画すものである。今年度の成果は以下の3点である。 (1)技法の効果を査定する道具としての「感情語再認テスト」を作成した。このテストは、否定的記憶へのアクセス緩和効果を検討する実験(下記(2))に使用するものである。大学生302名を対象に予備調査を行い、肯定語と否定語のそれぞれ12語ずつから構成される「感情語再認テスト」を2種類作成した。被験者114名を対象に実験を行い、この2種類のテストの平行性を確認した。このテストの作成過程と結果については論文としてまとめる予定である。 (2)「自観法」の短期的効果を検討するために、「感情語再認テスト」を用いて否定的記憶へのアクセス緩和効果に関する実験を行った。自観法群、呼吸法群、統制群の3群における効果を検討した結果、自観法群の効果が有意に高かった(p<.05)。 (3)「自観法」の長期的効果を検討するために、2週間本技法を連続的に実施した場合のCMI、STAI、SUDの各指標における効果を検討した。自観法群と呼吸法群の2群における効果を検討した結果、両群とも2週間後にCMIとSUDにおいて有意な改善を示した(P<.01)。特に、CMIでは群間差も有意であり、自観法群の方が有意に改善していた(P<.05)。 (2)と(3)の結果に関しては、The 7^<th> Conference of the Transnational Network for Physical, Psychological and Spiritual Well-being "The Relevance of the Wisdom Traditions in Contemporary Society : the Challenge to Psychology"(2002)において口頭発表した。発表原稿に加筆修正を加えた原稿が出版される予定である。
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