研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、手続き的公正による自己価値性の高揚に関する問題を取り上げ検討した。本年度は、特に、前年度の調査(平成16年1月実施)で明らかにされた自己価値性の心的構造ならびに測定尺度の構成に関する検討を深めるため、2回目の調査を実施した。調査は、京都市有権者を対象に無作為2段抽出法により700標本を抽出、郵送配付訪問回収法により平成17年1月に実施された。有効回答数は451件、回収率64.4%、回答者属性は男性48.3%・女性51.7%、平均年齢44.4歳(range20-74)であった。第1回目の調査で明らかにされた自己価値性の構造を再確認するため、主観的幸福・存在意義・社会的自己受容の3概念のそれぞれを潜在因子とし、その背後に自己価値性の因子を仮定した2次因子モデルを検証的因子分析(CFA)により検討した。観測変数は、主観的幸福「社会に生きるひとりとして幸せ」「人生を振り返ってよかった」「まわりとの関係で生きていてよかった」、存在意義「わたしがいなくなるとまわりに困る人が出てくる」「まわりとの関係で自分自身はなくてはならない存在」「自分の存在が周囲の人にとって価値を持つ」、社会的自己受容「この社会における自分の役割が気に入っている」「周囲との関係で自分のおかれている立場を受け入れられる」「自分の生き様が充分容認できる」である。欠損値を含むケースを除外し415標本で解析したが、RMSEA=0.088となり適合が否定された。そこで、探索的因子分析(EFA)を援用し観測変数の吟味を行ったところ、存在意義の1項目「なくてはならない存在」が不適切であることが示唆された。そこで、この項目を除去し再度CFAを実行したところ、RMSEA=0.083に向上したが、適合にはいたらなかった。さらに、このモデルの修正指数を吟味したところ、主観的幸福の項目「生きていてよかった」と存在意義の項目「困る人が出てくる」の誤差間に相関が示唆された。そこでこれらの誤差間に相関を設定したモデルを解析したところ、CMIN/DF=2.717,GFI=0.974,CFI=0.985,RMSEA=0.065,AIC=83.5(72.0)となり、適合が認められた。以上の結果から、昨年度に引き続き、本年度のデータからも3下位概念による自己価値性の心的構造が示されたといえる。本研究における自己価値性は、自己定義の3側面(個人・関係・集団)に関する自尊感情のうち、測度が未開発である「関係自己の自尊感情」に相当すると考えられる。次年度は、2つの調査で得られたデータに基づき、自己価値性(関係自尊感情)がリーダーの手続き的公正によって受ける影響、さらには向集団行動生起へと結びつく心的過程に関し、統合的モデルを構築し検証を行う。
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