本研究は、3つの研究を通じて、手続き的公正の自己価値性を明らかにするものである。本研究では、権威評価のSelf-Valueモデルとして、所属集団の権威の手続き的公正が公正認知者である成員の当該集団における社会的アイデンティティを高め、それが向集団的態度・行動、さらには当該集団における自己評価の向上に結びつく過程をモデル化し検証した。研究1では、手続き的公正により高められた社会的アイデンティティが向集団行動に結びつく過程を、類型化された行動で吟味した。その結果、対権威行動では手続き的公正の直接影響とともに、社会的アイデンティティのプライドの媒介影響が常に認められた。対成員行動では主張性が強い支援行動においては社会的アイデンティティの媒介影響のみが見られた。これらの事実から、権威支持行動は主として手続き的公正の直接効果によるものである一方、他成員への主体的自発的支援行動は、所属集団の一員であるという所属性イメージの高まりが必要であるといえる。研究2では、所属集団における新たな状態自尊心として、関係的存在意義・社会的自己受容・関係的幸福の3下位概念からなる関係自尊心の概念を提出し尺度化するとともに、手続き的公正の社会的アイデンティティモデルで検証した。その結果、いずれの場合も3下位因子からなる関係自尊心の構造が確認された。さらにプライドを感情と地位の2つに分け、それぞれの媒介性を検討したところ、手続き的公正と関係自尊心を媒介するのは感情プライドであることが示された。研究3では、感情プライドを集団への愛着として捉えなおし、国に対する向集団的態度に対する媒介過程を検討した。その結果、国政権威の手続きに対する査定は、直接ではなく、国への愛着を通じて向集団的態度を促進することが示された。本研究の知見は、手続き的公正が自己価値性を高めることによって、個人を内面から集団に結びつけることを示唆する。
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