研究概要 |
本年度は、日本と英国の幼児を対象として、心の理論の推測課題について、日本と英国の間での比較研究を行った。特に、本研究では、心の理論を促進すると仮定されているバブル法を用いて、このような課題でも文化差が見られるのかどうか、心の理解についてのメカニズムのどの段階に日英の文化差が見られるのかを解明しようとした。本研究では、情報処理のメカニズムについての前提的仮説として、心の推測の過程は、表象の想起の過程、表象の統合という過程の3つの下位過程から構成されていると仮定した。本研究では,これらの3つの過程の内、どの過程で文化差が見られるのか、もしくはどの過程で文化差が見られないのかを明らかにしようとした。そこで、3歳から6歳の幼児を参加児として、バブル法課題と標準課題を用いて幼児の行動の比較を行った。行動の分析として、正反応数の比較、反応間の相関を算出した。その結果、標準的な心の推測課題では文化差が見られたが、バブル法において文化差は見られなかった。また、課題に用いられたテーマによって文化差が見られた。これらの結果から、日本の子どもと英国の子どもに間に処理の仕方に文化差が見られるが、基本的な能力の差は見られないことが示唆された。この結果は、統合や表象過程など情報処理における機械的処理よりも、メタ認知など処理を統制する過程に問題があることを示唆している。このことは、主体性の発達を重視するかどうかと言う教育や養育の問題であることが示唆される。
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