平成15年度は、本研究の2年目に当たり、研究テーマに関わる資料や文献の収集を継続すると同時に、愛媛県南予地方内子町の直売所と対比しながら山形県庄内地方櫛引町の直売所に参加している農家の実態を明らかにする現地調査を実施した。その結果、以下のことが明らかにされた。 1.直売所のある山形県櫛引町山添地区の農業は、稲作を中心に、ブドウや柿やナシやサクランボといった多品目少量生産の果樹栽培や野菜を加えた複合経営を特徴とする。 2.直売所に参加している農家の直売所での販売金額の平均は約189万円(2002年度)であり、従来の複合部門や自給畑で栽培している作目の種類を増やしたり、収穫の時期をずらして、直売所への出荷を意識した作付体系に代えることで対応していた。 3.このことは、より労力のかかる栽培体系への変化であり、直売所に参加して後の変化としては、「収入はあがったが、忙しくなった」と答える人が多かった。 4.直売所に向けた作目の栽培や出荷や販売は、稲作と従来の農協や市場に出荷する複合部門での作目の栽培に加え、収入的にも労力的にも、第二の複合部門とでもいうべき経営の柱になっていた。 5.直売所は、個人として参加する組合員による運営方式をとるが、直売所への出荷や販売以外の生産に関しては、組合員や女性の会の会員以外にも複数の家族員が従事しており、個々人というよりは、「農家」として参加していた。 6.参加農家の家族員の就労形態や収入を分析した結果、農業センサスの統計の定義された専業農家は、ほとんどおらず、兼業農家の多様なヴァリエーションが示された。 →以上の結果を踏まえ、櫛引町の歴史と風土についての論稿、及び日本農業の担い手である「農家」という組織の性格と構造について考察した論文、及び<いま・現在>の農村を分析する基本的枠組みについて考察した論文を執筆した。
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