本研究の目的は、現代日本の都市における在日コリアンの親族会組織の生成・変容過程とその現状を、在米コリアンの親族会組織との比較分析を行うことを通じて、都市におけるエスニック・コミュニティの一形態についての考察を加えることである。具体的に、米国のサンフランシスコとロサンゼルスに親族会組織を形成している全州李氏の親族会組識を取り上げる。今年度の研究目的は、在日コリアンの親族会との比較するために、米国の親族会の役員を対象とする予備調査を行い、研究仮説を設定することである。その結果、在米コリアンは以下の2つの親族会組織を形成していることがわかった。 1)サンフランシスコ親族会は、中間層の移民1世を中心にして、1990年代以後に形成された親睦組織である。創立当時の会長は、60歳代の男性(歯医者)である。在米コリアンは教会を通じて同族の人と知り合いになり、親族会を形成するようなったという。会長の任期は1年であり、現在の会長は4代目で、経済的成功者である。親族会の主な活動として、会員同士の野遊会(70〜80名)、新年会・総会(50〜40名)があげられる。親族同士の話題は親族に関する事柄が多い。今後、親族会はサンフランシスコに居住する同姓を探すことであるという。2)ロサンゼルス親族会は、コリアン・タウンに事務室がある。150世帯の会員が登録、理事は30人である。結成契機は、ロサンゼルスの韓国系の新聞やTVに親族会総会の記事を出したことである。これを通じて、親族会は1990年の第1回の総会には約250名の親族員が参加した。現在の会長は韓国と米国の両方の大学を卒業した50歳の男性である。今後、会長はパソコンで族譜のホームページの作成と親族を探す予定である。親族会は移民2・3世に民族的なプライドを与えることができるという。 このように、在米コリアンの親族会組織は1990年代に以後、教会やエスニック・メディアを通じて結成し、移民1世の経済成功者の男性を中心とする親睦組織である。親族会を結成する要因として、移民生活の長期化に伴って、親族という伝統的な絆がエスニック・アイデンティティをもたらす社会的機能が指摘できる。
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