本研究は北東北地域の沿岸地域を対象に、今日の漁村の生産・生活の状況を実証的に明らかにし、地域社会としての存続、地域再形成の方向を探ることを目的とした。 14年度は、(1)北東北地域の漁業生産構造の統計的把握と分析を漁業センサスおよび行政資料等によって行い、基礎的データを集積した。(2)青森県下北半島地域と陸奥湾沿岸地域の漁業・漁村の実態把握を行った。15年度は、下北半島(主として川内町)および津軽半島(三厩村・今別町)で調査を実施するとともに、日本海沿岸における漁業生産と地域振興の事例分析を主眼に、秋田県八森町を対象とした調査研究を実施した。16年度は以下の研究を行った。(1)岩手県の事例として釜石市におけるグリーンツーリズム事業を取り上げた。(2)青森県(津軽半島)と秋田県(八森町)について、補充調査を行うとともに、行政・統計・郷土関連の資料収集を行った。(3)3年間にわたる研究の総括として、得られた情報の整理・分析作業を行い研究資料集を編纂した。 研究から得られた知見は以下の諸点である。第1に後継者不在・高齢化の進行によって60歳以上の男女高齢者が漁業の担い手という状況にあること。第2に、養殖漁業資源の積極転換を図る川内町、漁家婦人たちが海藻を加工して製品開発を実践している三厩村、海浜レジャーの拠点として廃校を再利用し(今別町)、海(漁業)と陸(農業)をリンクさせたグリーンツーリズム(釜石市)といった地域資源の積極的活用が見られること。第3に、八森町では特産のハタハタを基軸にした地域振興を展開し、漁協女性部によるホッケの加工や「しょっつる」製造など漁獲資源を活用した地域特産づくりによって地域活性化に取り組んでいる。地域をいかに肯定的に捉え直すかが、地域再生・地域形成の方向を示唆しているといえよう。
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