家族および地域(集落)の変動の視点からみた、中山間地域の福祉ニーズの地域的特性とその変化要因に関する長期にわたる縦断的調査研究を一部継続しながら、地方分権化と自治体再編の流れの中でのあたらしい地域福祉の課題の解明に取り組んだ。 1.具体的な研究成果としては、福島県金山町において、全集落自治会30の活動実態調査をヒアリングで行った。この地域の集落自治会は、戦前から続いているもので、その形態はまさに村落共同体の自治組織といえるものである。具体的には、財産区その他の共有財産の保有を軸に、各種普請といった共同作業、共同施設の管理、冠婚葬祭の相互扶助、福祉的援助などが、地域高齢化の急速な高まりの中でも、かなり広範に行われていることがわかった。また、そうした集落自治区の活動が、地域での住民参加意識あるいは共同意識(コミュニテイ意識)涵養の重要な機会となっており、その中から、世代や出自を超えた、住民の公平、平等なメンバーシップと、自治意識が芽生えてきていることも重要なフャインデイングスであった。また、福祉システムの観点からみると、この活動が、福祉のニーズの発生の予防活動やニーズの発見の役割を果たしていると同時に、財政力の低下した中山間地町村における地域住民と公的セクターとの共同、連携、分担のあり方に、大きな示唆を与えているがわかった。 2.町村合併、分権と福祉制度の市場性、多元化の流れの中で、過疎地域の住民の福祉意識の変容を追った「住民の規範意識に関する調査」は、300サンプルを対象に実施し、回収率71%で、現在集計、分析中である。 3.昨年から継続しているセンサス等による「中山間地域の特性」の分析作業は、本年度は、2000年度現在、高齢化率30%超の自治体を対象に、60年までさかのぼってデータを整理、入力した。
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