1.住民参加によって地域環境保全に取り組んでいる諸事例において現地調査を継続し、地域特性と住民参加の様式の異なる事例間の比較を進めている。 2.横浜市鶴見区のM公園に関しては、都市コモンズとして公園を再定義する視点から、住民の公園整備への関与が「計画への参加」から「運営への参加」「管理への参加」へと発展してきた過程を「パートナーシップの形成過程」(『京都府立大学学術報告(人文・社会)』55号)において示した。住民と行政が相互の緊張関係をのりこえて関係形成を成し遂げたプロセスを解明するかことによって、地域環境ボランティアという「有志の尊重」の制度設計に関して具体的知見が得られた。 3.滋賀県守山市に関しては、共同研究の成果を論文「地域社会における水環境保全の『担い手』」(『水資源・環境研究』16号)にまとめた。地域住民組織を「自治会型組織」と「テーマ型組織」に分類し、自治会型組織によるテーマ型組織の「包摂型」、自治会型組織とテーマ型組織の「交叉型」、自治会型組織とテーマ型組織の「並立型」という三類型を設定し、それぞれに適合的な事例を取り上げて検討を行った。それぞれの「担いのしくみ」の差異と課題を示すとともに、その差異が混住化のタイプという地域特性の違いに基づくものであることを明らかにした。既存の伝統的な地域住民組織と近年のボランティア型住民参加をどのように結びつけていくかに関して具体的知見が得られた。 4.住民参加の現場における「有志の制度化」に伴う組織論的課題に関して、抽出・記述・解釈のための一定の枠組みを示すことができた。さらに、事例研究を重ねるとともに理論的考察を進めていく。
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