本研究では、住民による地域環境保全を対象として、住民と行政、伝統的な地域住民組織とボランティア型組織が、相互の緊張関係を克服し「自立と連携の両立」を成し遂げた過程を解明し、参加型環境保全の組織化現象としての把握と制度設計のための基本的枠組みを示すことができた。 「I部地域環境ボランティアの組織論」では、1章において提示した「むらづくり型」(集落基盤型)、「協議会型」(組織新設型)、「ワークショップ型」(仮想集団型)の3類型ごとに事例研究を進めた。2章では、「協議会型」の事例として滋賀県守山市の「豊穣の郷赤野井湾流域協議会」をとりあげ、「自立型活動」「連携型活動」という活動の方向性をめぐる対立の克服の過程を明らかにした。3章では「むらづくり型」について、自治会型組織とテーマ型組織の関係性から「包摂型」「交叉型」「並立型」という類型を提示し、守山市内の3つの自治会を事例として、地域特性と組織化形態の適合性について検討した。4章では「ワークショップ型」の事例として横浜市のM公園の再整備事業をとりあげ、計画の立案、ボランティア組織の活動展開におけるコンフリクトとその克服について「自立/連携」をキーワードとして明らかにした。 「II部地域環境ボランティア参加の規定要因」では、「赤野井湾流域協議会」の会員と守山市の一般市民を対象とするアンケート調査によって地域環境ボランティア参加の規定要因を明らかにした。5章、6章では、「地域環境ボランティア」活動は、イベントへの参加などの参加コストが小さい「第1段階の参加」と、組織の企画・運営などの参加コストが大きい「第2段階の参加」を区別することができ、それぞれの参加を規定する要因が異なることを示した。7章では、過去における「生活経験」が「地域環境ボランティア」への参加の重要な規定要因となっていることを示した。
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