本研究の目的は日本人男性との子どもをもち、日本において生活しているアジア系外国人母子家族の生活実態および養育実態と母親の生活意識を把握・分析し、彼女らの生活問題を明らかにすることである。 本年度は埼玉県、栃木県、東京都、名古屋市、大阪府、および福岡市に在住しているアジア系母子家族についての質的調査ならびに質問紙調査を実施し、母子家族になった経緯を把握するとともに、彼女らの生活実態および生活意識の把握を試みた。調査対象はフィリピン女性を中心に行った。 (1)埼玉県、東京都、名古屋市、大阪府、福岡市におけるキリスト系教会を訪れ、聞き取り調査により各地域における在日外国人女性および母子家族の生活状況の把握を試みると共に、被調査対象者の把握を試みる。 (2)アジア系外国人女性への支援活動者との面接により、母子家族の問題の把握を試みる。 (3)母子生活支援施設および保育所を訪問し、聞き取り調査により母子家族の実情を把握するとともに、異国籍間の児童ならびに外国籍児童の実態および国際結婚の問題と養育機能の崩壊についての把握を試みる。 (4)各地域に在住しているアジア系母子家族の母親に面接調査を実施する。彼女らが来日してから母子家族に至るまでの生活史、結婚生活の実態、離婚・別居背景、現在の生活状況についての聞き取りを行う。 (5)アジア系母子家族の母親への質問紙調査を実施する。調査内容は生活実態、養育実態・意識、就労実態、日常生活の問題・不安、生活意識等である。 以上の調査から、彼女らの多くは未だに夫の暴力(DV)から、そして子どもは父親の虐待からのトラウマを抱えており、不安のなかで生活している。さらに母国から子どもを呼び寄せた家族にとっては子どもの学校問題・教育問題も深刻であることが把握された。
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