(1)昨年度に引き続き、広島平和記念公園周辺の資料館・記念碑を中心に調査を行ない、これらの資料館や記念碑が原爆の記憶を形成し再生産するうえで果たしている役割に関してデータの収集および分析を行なった。主な調査対象は、広島平和記念資料館・国立広島原爆死没者追悼平和祈念館・原爆ドーム・韓国人原爆犠牲者慰霊碑・本川小学校資料館である。 (2)平成15年8月6日の原爆忌前後に開催される記念式典・追悼行事についてフィールドワーク調査を行なった。主な調査対象は、平和記念式典・韓国人原爆犠牲者慰霊祭・福島地区8・6朝の集いである。これらの調査から、原爆忌における原爆の記憶は、一方で平和記念式典に代表されるように「国民の記憶」へと求心化するベクトルと、韓国人原爆犠牲者慰霊祭・福島地区8・6朝の集いに見られるように、それに対抗し遠心化するベクトルの両者を含み、全体として原爆忌は「記憶のアリーナ」として特徴づけられることをあきらかにした(「ヒロシマを歩く」参照)。 (3)カンボジア・プノンペンにあるトゥール・スレン博物館および「キリング・フィールド」の現地調査を行ない、戦争の記憶の形成に関する比較を行なった(「モニュメントとしての写真」参照)。
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