平成14年度は主に、日本における家族の子どもに対する学校外教育投資の実態と母親の就労状況に関する分析を行うとともに、アメリカにおける公開データの収集と文献サーヴェーを行った。具体的には以下の4点である。 1)「家計調査」、「全国消費実態調査」、「子どもの学習費に関する調査」等の公表統計データを用いて、妻の就労状況による家計消費における教育費および学校外教育費シェアの相違を分析した。 2)「学習塾等に関する調査」、「国勢調査」、および「学校基本調査」の都道府県別データを用いて、通塾率と女性の就労状況および高等教育進学率の関連を分析した。 3)「小学生・中学生の生活に関するアンケート調査」(連合総合生活開発研究所、1995年)の個票データを用いて、就学児童・生徒が学習系学校外教育活動に費やす時間と母親の就労状況を分析した。 4)諸外国の学校外教育サービス(Shadow Education)の実態に関する文献収集および、特にアメリカにおける公開データの収集と文献サーヴェーを行った。 このうち、1)、2)からは、総計として共働き世帯は妻が無業の世帯に比べて教育関連支出が消費支出額の差以上に高い傾向を示すものの、都道府県別に見る通塾率と女性有業率には、特に高等教育進学率の高い地域で負の相関が観測された。また、3)の個票レベルの分析でも、子どもが費やす学習系学校外教育時間と母親の就労状況には相関が見られず、教育投資における階層格差を母親の就労が緩和している状況は確認されなかった。 1)、2)の結果は、シカゴで行われたAmerican Sociological Associationの年次大会で発表し、その論文はFrances Rosenbluthの編集するPolitical Economy of Childcare and Maternal Employment in Japan(仮題)の一章として掲載される予定である。 また、3)の結果はSSJデータアーカイブ・リサーチペーパーシリーズとして発表予定である。
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