平成16年度は下記の4点を中心に研究を推進した。 1.日米の家族の教育戦略と母親の就業行動に関する資料、文献の整理。子どもへの教育投資と母親役割の教育的機能に関する数量分析、質的分析双方の先行研究の成果から、両国の研究系譜の理論的枠組みを比較検討した。 2.家族の教育戦略と母親の就労に関する日米双方のマクロおよびミクロデータの分析。 3.学会等での発表。American Sociological Associationの年次大会(於サンフランシスコ)、およびシンガポール大学主催のThe International Workshop on Working and Mothering : Asian Women Negotiating Work Challenges and Family Commitmentsにて論文を発表した。 4.研究の全体的総括、および出版準備。『女性の就業と親子関係:母親たちの階層戦略』(勁草書房)、Working and Mothering : Asian Women Negotiating Work Challenges and Family Commitments (Singapore Univ.Press)等の分担執筆原稿の加筆修正と出版準備。 研究の結果、得られた主な知見は以下の通りである。第一に、日米双方とも子どもの学歴達成は、地域格差、階層格差を伴いながら、親の意図的な計画と家庭における環境整備も含めた物心両面の教育投資の度合いに比例する部分が大きくなっていること。第二に、日本では、都道府県レベルの分析でも個票レベルの分析においても子どもの教育投資は母親の労働供給とおおむね負の関係にあったが、アメリカの場合はそのような明確な関係はみられず、様々な教育プログラムが母親の育児時間を代替する側面もみられた。
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