研究課題
基盤研究(C)
家族の子どもに対する教育投資行動は、教育投資の収益率と親の経済的階層に依存する。また時間・財投入配分は親の機会費用に依存する。つまり、教育投資の収益率を所与とした場合、機会費用が高い親(市場賃金が高い親)は同じ結果を得るために時間投入を減少させ財投入を増やすはずである。この仮説を検証すべく、本研究では日米家計の教育支出と母親の就労行動に関する分析を行った。その結果得られた知見は大きく二点に集約される。第一に、日米双方とも子どもの学歴達成は、地域格差、階層格差を伴いながら親の意図的な計画と家庭における教育投資の度合いに比例する部分が大きくなっていること、第二に、日本では都道府県レベルの分析でも個票レベルの分析でも、子どもの学校外教育サービスへの参加は母親の労働供給と概ね負の相関にあったが、アメリカの場合はそのような関係はみられず、むしろ学校外で展開される様々な教育プログラムが母親の育児時間を代替する側面がみられたことである。こうした違いは両国の教育システムの構造的相違に基づいていると考えられる。第一に、公教育に対する国家(連邦政府)と地方の関与のありかたである。アメリカの学区は予算編成を含む裁量権を持つため、教育水準が学区により大きく異なり不動産価格が学区の教育水準を反映するため、子どもへの教育投資は居住地の選択とも深く連動することになる。第二に、Shadow Educationと呼ばれる学校外教育産業が日本はアメリカに比べて格段に発達している点である。前者、教育水準の学区差について、名古屋市を例に学校外教育産業の空間分布を分析した結果からは、市場による教育サービスの供給は学区によって大きな格差があることが確認された。また、学校外教育産業と公的学校教育の関係について、日本ではそれぞれ別個に存在しつつ水面下ではある種の潜在的な依存関係が形成されているのに対し、アメリカの場合は市場で提供される教育サービスを公的な学校教育が取り込んでいることが示唆された。
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(口頭発表)
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