本調査研究では、仏教が一般庶民の「煩悩」に即して「菩提」を説き、「方便」を以って「真実」に誘引する、衆生教化法の今日におけるあり方を仏教系新宗教教団の中に探り、その具体的な工夫手立てを「教導システム」と規定し、その実態を本門佛立宗・霊友会・創価学会・立正佼成会・真如苑などの事例のなかに探った。その結果、仏教系の新宗教教団のそれぞれが種々の教導手段を持ち、自利の「凡夫」を利他の「菩薩」にする体系的な修行のシステムを有していることがわかった。そのシステムの内部においては、仏典や題目の読踊によって、六波羅蜜などの特定の徳目実践によって、布教や社会的実践(選挙を含む)によって、またあるいは教団霊能者への「お伺い」や教団中央への祈願依頼・財施(献金)などによって、罪障消滅や「徳積み」ができ(修徳致福)、仏心に近づくことが説かれていた。 また、仏教系新宗教教団の多くが、信仰の深まりに応じた幾つかの位階を設けており、信者にその位階を上昇させ、教団の期待する信者像により接近できるよう、社会化させていくことが教団の中間指導者に求められていることも判明した。この場合、位階を上るごとに新しい礼拝対象が与えられるが、信者には、その都度、応分の財施(献金)が必要になる。 調査研究の結果、教団の期待するより上位の信者像と一般杜会が期待する人間像の間にはずれが存在することが浮かび上がってきた。具体的に、そのギャップの実態や程度を探ることについては今後の研究課題としたい。 以上の調査研究の成果は、平成14年度に刊行された資料集(1)、平成15年度に刊行された資料集(2)および調査報告書に集約されているが、本格的な成果の公表は今後の課題として残されている。
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