本研究は、映像の活用による効果的な社会学教授法を開発する実践的研究であり、その研究プロセスから社会学研究における映像利用の有効性および発展性を吟味し映像杜会学の理論的体系の構築を射程に入れた理論研究でもある。 本年度は研究期間の初年度にあたる。素材ソフトとして講義科目「アジア社会論」の教材制作にあたり、シラバス作成と映像資料の構成を検討し、映像資料の不足を補填するためタイ(平成14年9月)及びベトナム(平成15年3月)において資料収集を行った。具体的には、東南アジアにおけるコミュニティ構造と開発にテーマにしぼり、当該地域に関する概要を導入とし、主題に関する記述と映像はタイ及びベトナムにおける低所得者層のコミュニティを取り上げ焦点の拡散を避けた。一般映像の引用を全体の2割程度に抑え、残りは2カ国のスラムを徹底して紹介し、ミクロの視点からコミュニティ構造を捉えながら一般化へとシナリオを展開しマクロにも把握できるように工夫した。シナリオとその内容を説明する映像資料の収集及び提示方法を体系化する作業が今後の課題として明確になった。なおシラバス構成にあたり、タイではアジア工科大学院(Asian Institute of Technology)のDr.Perera、ベトナムではベトナム都市計画開発協会(Vietnam Urban Planning & Development Association)のDr.Keの両氏から助言を得たうえに、映像資料についても多くの示唆を得た。 また、映像杜会学の先駆的事例をトレースするため、ニューヨーク州立大学バッファロー校のDr.Hongとロチェスター工科大学のDr.Battagliaの両氏と面会しレビューを受け、理論構築についてそれぞれ意見交換を行った。 なお、本年度の研究成果をCD-ROM化し、平成15年7月の国際映像社会学会年次総会で発表する予定である。
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