本研究は、映像の活用による効果的な社会学教授法を開発する実践的研究であり、その研究プロセスから社会学研究における映像利用の有効性および発展性を吟味し映像社会学の理論的体系の構築を射程に入れた理論研究である。 具体的には、学部開講科目『アジア社会論』の素材ソフトをPower Pointをプラットホームとして制作することにより、映像活用の実践と理論の構築に知見を見いだすことである。利用映像は主に東南アジアで撮影した。わが国と交流の歴史をもち、多くの国際機関がその出先機関を設置しているタイ王国を選んだ。わが国からのビジネス、観光等で訪問する人口も多く、他の東南アジア諸国よりも理解が得られやすいとの判断もあった。 映像構成にあたっては、観光等でふだん目にすることができる一般的な映像で導入を図り、バンコクおよびアユタヤで定住環境の整備が進められているスラムを含む地域社会の開発活動と、そのために組織化が進められているコミュニティ・ネットワークの成立と活動をトピックの中心に据えて、タイ社会の今日的課題とその取り組みを通して当該社会の理解を試みた。 研究成果は、国際地域学部紀要、東洋大学およびAIT(Asian Institute of Technology、Thailand)とのジョイントセミナー、IVSA(lntemational Visual sociology Association、国際映像社会学会)の年次総会、単行本等で日本語および英語で発表することができた。 本研究期間においては映像活用において静止画を中心に行った。それはプラットホームとして利用したPowerPoint上での利用を考慮してのことであったが、今後の研究では多様なメディアを利用しビデオ映像を活用することで、映像利用のさらなる知見を得て映像社会学の構築を深めていきたいと、その抱負をますます強くしている。
|