本年度の研究の第一の目的は、1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締結以降今日までの日本および主要諸国の温暖化政策の動向を年表形式で整理し、『地球温暖化政策比較年表』と題するデータベースをウェブ上に立ち上げることにあったが、基本的な資料の収集と整理は今年度にほぼ完了し、来年度の早い時点でデータベース化ができる見とおしがついている。今年度の成果は、日本および諸外国の温暖化政策に関する文献・資料を分析した結果、地球温暖化政策の国際比較に資する年表を作成するには、(1)国連気候変動枠組条約成立までの前史(2)それ以後からCOP3(温暖化京都会議)における京都議定書の成立まで(3)京都議定書成立以後の各国の批准への動きと国内政策の展開、特に2001年のアメリカの京都議定書からの離脱まで(4)アメリカの離脱以後COP8(インド)を経て今日に至る動き、という4つの大きな時代区分を立てることが適切であることが明かになった点にある。 第二の目的は、特に注目に値する外国の温暖化政策の事例研究を実施することにあったが、本年度は、当初の計画を変更し、昨年COP8の開催・議長国となり、温暖化政策の一環として風力、太陽光、バイオマスを中心とする自然エネルギー(=再生可能エネルギー)の開発と普及にアジアで最も積極的に取り組んでいるインドの実情を現地に赴いて調査し、政府の「非在来型エネルギー資源省(Ministry of Non-Conventional Energy Sources=MNES)」(インド政府は、石油、石炭など枯渇性エネルギー資源を「在来型」、再生可能な自然エネルギーを「非在来型」と類別している)においてエネルギー転換政策の実情について政務次官をはじめ関係者からヒヤリングを行うともに、民間部門において最も積極的に温暖化対策としての自然エネルギーの開発と普及に取り組んでいるTATA Energy Research Institute(TERI)のオフィスと自然エネルギー自給システムのパイロット・プロジェクトの現場を視察し、ハリアナ州の農村における農業廃棄物などを利用したバイオマス・エネルギー開発の実情とその社会的意義を解明することもできた。 第三の目的については、日本国内の独自の温暖化政策として森林保全に取り組んでいる兵庫県の「森のゼロエミッション」について現地の関係者および住民からヒヤリングを実施し、有益な知見が得られた
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