本年度は、2005年2月に京都議定書が発効したことにより、初年度から作成を進めてきた『地球温暖化政策年表』(仮題)の時代区分を、これまでの時代区分をひとまとめに「発効以前」としたうえで「発効以後」とに大きく分け、発効以前までの国際的および主要各国内の政策動向を総括するとともに、発効以後の政策課題のポイントを、(1)二酸化炭素の排出権取引の展開、(2)環境税(炭素税)の動向、(3)クリーン開発メカニズム(CDM)を中心とする途上国の温暖化対策に対する国際的支援の動向、(4)サブシディアリティの原則の適用範囲(つまり、より小さな意思決定主体の優先性の許容度)の四点に絞って、次年度に向けてさらに作成を進める準備を整えることができた。 海外の温暖化政策研究については、諸般の事情によりEU諸国の現地調査は実施できなかったが、インドネシアの現地調査を実施することができた。その結果、インドネシアでは、CDMによるEU諸国や日本からの植林・造林事業やマングローブ再生事業、あるいはバイオガス・エネルギー導入事業など、京都議定書の発効を見越した事業計画が急速に進んでいること、その受け皿となる国内企業や地方自治体も、前者の場合は「企業の社会的責任(CSR)」の観点に立って社会に貢献できる温暖化対策を志向しつつあること、後者の場合は、分権化への移行に伴って温暖化対策における地方自治体の自主的取組が見られるようになりつつあることが、事例調査によって明らかになった。 日本国内では、前年度に引き続き、兵庫県加美町丹治地区の住民(財産区有林権利者)が運営している木材の二酸化炭素吸収量を付加価値化したユニークな木材直販制度の実情をさらに詳細に調査し、製材業者や木材流通業者と地元集落組織との融通無碍なコラボレーションが事業の成功要因であることを明らかにできた。
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