交付申請書に記載した「研究の目的」については、本研究の最終年度であった平成17(2005)年度末(2月)にようやく京都議定書が発効したことにより、その後の経過の追跡に時間を要したが、現時点でほぼ達成することができた。とりわけ、経済と社会のグローバル化が地球温暖化防止政策に及ぼしている影響の比較社会学的分析については、「地球温暖化政策年表」の作成作業の過程における理論的・実証的検討を通じて、京都議定書を軸に展開されてきた地球温暖化防止政策そのものが、南北間の亀裂と環境悪化の現れ方の格差(気候格差)をますます拡大していること、また、その拡大過程において、世界的には温暖化対策が後退している(=CO_2は増え続けている)ことを明らかにすることができた。ただし、「研究実施計画」で企図したインドネシアなどアジア諸国におけるクリーン開発メカニズム(CDM)事業の実施状況やEU諸国ではすでに本格的に始まっている炭素税や排出権取引の国際比較調査については、本研究に着手した時点(2002年)で予想した以上に日本およびアメリカの政策展開が著しく遅れているため、今後も継続すべき課題は多々残されている。 だが、目前に「ポスト京都議定書」という政策課題が迫っている今、「サブシディアリティの原理」の再評価、および、温暖化による被害の最前線に直面しながら政策過程から排除されている「エコロジカル・サバルタンとしての途上諸国の民衆への応答」が急務となっているという本研究の結論は、環境社会学の独自の貢献と言ってよい。
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