研究概要 |
企業従業員(中間管理職以下)を対象として2003年春に中国の2都市(北京市と西安市)で実施したアンケート調査によって1262票の有効回答が回収されて、以下の知見が得られた。 (1)2都市間の予想以上に大きな生活格差の存在。所得水準や耐久消費財の所有率にも明確に反映される。経済発展度のほか首都であり学術都市でもある北京市の特殊性(学歴水準がきわめて高い)に起因するのかもしれない。今後、他の都市でのデータ集積が必要である。 (2)市場経済化の進行に伴う労働者層の内部における階層化の進行(1995年,2000年,2003年に実施した、所得水準、格差への認知の仕方、労務管理等に対する意識に関する時系列データの解析に基づく)。 (3)社会態度論ないしはライフスタイル論から見た"社会主義適応型"の抽出、その割合と社会構造上の特性の分析。 (4)エリート層の形成と意識の分化(生活不安の分析による)。 (5)環境悪化と環境意識の階層的分節化。 (6)社会主義的雇用形態の現状と懐古意識の存在(頂替制度、分配制度、"同単位就業"慣行などの実態と意識の分析による)。 (7)(補足)中国における無作為抽出法の実態に内在する問題点の指摘。 さらに、本研究(2003年実施の調査データに基づく)は中国における「労働者意識変容研究」の継時的な比較分析を目ざしたもので、今回の解析の中でも時系列データも一部で使用したので、報告書には2000年に実施した調査結果の単純集計も掲載した。
|