(1)障害者基本計画(2003-2012)における入所施設利用者の地域生活移行施策の検討 障害者基本計画の脱施設化施策は、知的障害者入所更生施設の整備抑制施策が本質であり、基本的には政府による知的障害者入所施設施策の放棄であることを、同計画の審議過程及び同計画の変遷から明らかにした。従って本研究の課題は、現場における地域生活移行実践と方策の検討が重点となった。 (2)大阪府内知的障害者入所施設の利用者・家族の調査研究 大阪府内25入所施設の1400人の利用者及びその家族600人の生活実態と地域生活移行への意向調査を行った。4割が在籍20年以上、3分の1が定員90人以上の大規模施設であり、ほぼ全国の実態の縮図と言える。利用者の4割、担当職員の4割が地域生活移行を表明したが、保護者は1割に満たない。この差異の解明をして移行実践の基本的課題を提起した。これだけ多くの家族に対する調査はわが国はじめてであろうと考える。所得、要介護率、寿命など深刻な実態がリアルにされた。しかし高齢になっても面会回数が増加するなど、子の保護者としての活動や意識はむしろ強まっている。家族とともに、という移行実践の重要性も確認できた。 (3)地域生活移行のための方策 地域資源の開発を前提にしつつも、実践上の基本的な課題としては、継続的固定的な施設支援と断続的交代的な居宅生活支援の相違を明確にしつつ、その支援形態が移行するための準備や訓練をしていくことが重要であると明らかにされた。欧米のケースマネジメントの手法や理念を日本的に蓄積された施設支援との比較で検討、教訓化した成果である。
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