研究概要 |
本研究は、森と河川を中心とした地域環境の保全と改変の実態にかかわるローカルな知識の集積を、行き詰まりつつある環境政策に反映するための基礎的データの収集とデータベースの構築を目的とした。これまで地域環境利用に関する質的データの蓄積は乏しく、データベースは皆無と言ってよい。データベース手法さえ模索状態である。そのため本研究では日本の河川流域、島嶼部を中心としたフィールド・データを収集するとともに、すでに収集してきた資料の整理や文献の資料化もおこなった。同時にそれらの資料の公開の可能性を検討した。 本研究全体として次のことを実施した。1,全国森林・河川での環境利用にかかわる聞き取り調査、2,琵琶湖・矢作川流域ですでに蓄積された資料のデータベース化、3,あらたな文書資料の収集とそのデータベース化。4,これらの実査をとおして河川流域研究の既存文献を環境利用という切り口で整理しデータベース化。5,さらに文献の調査地の住民、研究者との情報交換をおこない環境情報ネットワークの可能性の検討。 最終年度の平成16年度は、1,それぞれの蓄積データのデータベース化のための資料解読、入力をおえ、データベースの試用を開始した。ことに滋賀県マキノ町において近世末の新資料を近世史の専門家の協力も得ながらその解読を開始した。2,また15年度に調査した地域の現地調査とともに周辺地域についても関連調査を実施した。森林・河川についての認識や規範の類似と差異を分析して、地域の生活環境構造を明らかにし学会誌などに掲載した。 全体の成果は、これまでの成果と併せて京都大学に学位論文として提出し、『村の生活環境史』(2004年3月、世界思想社)として刊行した。さらに今後、資料の解読をすすめ、今回得られた史料を解題と併せて、『村の日記-江州知内村記録』として出版、およびデータベースの公開を予定している。
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