本研究は、森と河川を中心とした地域環境の保全と改変の実態にかかわるローカルな知識の集積を、行き詰まりつつある環境政策に反映するために、基礎的データを収集し、データベースを構築することを目的としている。そのため日本の河川流域、島嶼部を中心としたフィールド・データを収集するとともに、すでに収集してきた資料の整理や文献の資料化をおこなった。 具体的には1)全国森林・河川での環境利用にかかわる聞き取り調査と2)琵琶湖・矢作川流域ですでに蓄積された資料のデータベース化、3)あらたな文書資料の収集とそのデータベース化、4)またそれらの資料と個別の地域での既存の調査データをつきあわせる方法論の検討をおこなうために、河川流域研究の既存文献を環境利用という切り口で整理しデータベース化をおこなった。 1)はおもに矢作川流域、熊野市で実施し、その成果の一部は『環境漁協宣言』(古川監修、風媒社、2003.12)として発表した。2)、3)は「記録」と呼ばれる村落の260年にわたるデータの幕末部分の解読を終えた。その他の周辺的な近世文書、近代文書との関連づけのためのインデックスを作成した。データベースの構造については専門家との研究会を通して試作品を作成した(開発名TAG-DB)。本データベースは画像、音声などを繋いだ統合型DBとして、資料共有をめざすとともに、今後はフィールドワークでの利用に供せられる方向で変更を加えつつある。 これら一連の研究成果の一部は『村の生活環境史』(世界思想社、2004.3)として刊行した。なお村落の260年分の「記録」は、注釈・解題を付して『村の日記』(2008.3)として刊行すべく準備を、本研究期間中に開始した。
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