<経緯>『保育環境評価スケール・幼児版』『保育環境評価スケール・乳児版』を活用しての現場との交流を継続し、保育所の「第三者評価」との関連性も追及し学会での自主シンポジウムの開催を行った。スケールに関しては代表研究者・埋橋玲子は、著者らとのより親密な交流、アメリカ国内の保育プログラムを複数訪問し、ディレクターや他の保育研究者との交流をとおして、より理解を深めた。現在アメリカでは保育の質向上が政治的なアジェンダとなり保育内容・管理運営の両方の観点から質の評価システムが着々と広まりつつある。 <カリキュラムと評価の関係>カリキュラムは大きく2つのタイプに分類される。アウトラインと保育の最終目標を示し、その実行の細部は各保育プログラムの自主性に委ねられるものと、保育の目標を子どもの発達の姿に即して具体的に規定し、その実行を細部にわたって示すものである。スウェーデンのナショナル・カリキュラムは前者である。その場合にはプログラムの利用者である保護者の価値観も大きく作用し、保育者と保護者の対話が重視され、そのプロセスが評価として機能する。日本のナショナル・カリキュラムに相当する「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」もこのタイプである。イギリスのナショナル・カリキュラム、あるいはアメリカで個別に発展を遂げている固有のカリキュラム(ハイスコープ、クリエイティブ・カリキュラムなど)は後者に相当する。保育の目標の明示とその成果のモニタリングにより、評価が極めて具体的な視点から行われる。これらのいずれを採用するかについては、大きくは政治的なシステム、社会の「子育て」や「保育」をめぐる状況や価値観が大きく影響を与える。「評価」は構造・機能・利用者の満足という3つの観点から考えられなくてはならない。
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