上記の課題に関して、平成14年度は、研究代表者の本務校の教室において調査票を配布し、学生の親・学生自身とその友人(男性)を対象とした「日本人の羨望と嫉妬に関する社会学的調査」と題するアンケート調査を岡山市において実施した。配布票数:976、有効回収票数:379(38.8%)であったが、予想通りサンプリングに多少の偏りがあった。 理論的には"envy"と呼ばれている情動のなかに、「怒りを含まないもの」と「怒りを含んだもの」の2種があり、前者をわれわれ日本人は「羨望」と呼び、"envy"のうち後者の部分(怒りを含んだもの)と"ealousy"とを総称して「嫉妬」と呼んでいるとみなされる。このような情動の認識と呼称については、社会文化的な背景が見られるが、今回のアンケート調査においては、そうした情動認識の違いが見られるように配慮した。 調査結果の集計は統計処理会社に委託し、現在単純集計結果と、年齢・性別×「羨望」「嫉妬」に関する各項目、現在の暮らし向きの自覚×「羨望」「嫉妬」に関する各項目などのクロス集計結果(計105項目)を得た。 クロス集計データについては、まだ分析を行っていないが、単純集計データでは、羨望経験が「ない」または「わからい」と回答したものが2割に達すること、嫉妬を自覚した経験の有無については「ある」と回答したものがわずか4割に達しないにもかかわらず、「ない」と回答したものが5割に達しているという予想外の結果を得た。また「羨望」が諦めや自己激励に結びつくのに対して、「嫉妬」は社会の不公正や「他者から認められていない」という社会に対する「恨み」と「怒り」に結びつく傾向が見られたが、これは予想通りの結果である。 クロス集計の分析も含めて、〔自己が払ったコストに対する報酬〕と〔他者が払った(と想像される)コストに対する報酬〕との比較から生じる羨望と嫉妬の内容把握と相互連関を分析することが次年度に持ち越された課題である。
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