前年度までの研究において隙間的遊びをルーティンとの関係(距離、逸脱、復帰等)で理解する方法についていくつかの問題を検討してきた。本年度はルーティンを構成するために遊びの参加者が相互に達成するカテゴリー化の働きについて検討を行った。 参加者の発話や行動(表情や視線、姿勢といったものも含まれる)がカテゴリー化の重要な要素となる。ただし、単独の発話や行動がそれ自体で意味を持つのではなく、それに対する他の参加者の態度という相互的プロセスの中で一定のカテゴリーを対象とすることが可能となる。遊びは他の社会的行為と比べて、カテゴリー化の作用が明確でない場面も多く見られる。そのため遊びの参加者を特定の社会的カテゴリーもしくは社会集団に位置づけることによってのみカテゴリー化を説明することは困難である。 子どもの遊びにおけるカテゴリー化の根拠は特定母集団の規範によって支持される部分と、観察者からは恣意的に持ち出されたように見える要求との混合物である。両者の区別は必ずしも明確ではないが、後者を達成するためにはより多くの威信やテクニックが必要となる。そのため子どもの特性によりカテゴリー化へのかかわりは大きく異なってくる。そのような資源はカテゴリー化の協同達成にととまらず、カテゴリー化を巡る駆け引きにも関係している。 また、様々な基盤から引き出されるカテゴリー化の正当性は、子どもたちを取り巻く社会的環境となんらかの関係があると予想される。遊びの中にニュースで繰り返されるフレーズを持ち込むようなわかりやすいものから、相互作用の中で繰り返される選択の背景にあるものまで、これら遊びの外部構造がどのように影響しているかを具体的な場面に即して検討する必要がある。
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