平成15年度は、交付申請書にそって道内の漁村地域でヒアリング面接調査と郵送調査とを実施した。対象地は道南の椴法華村であり、沿岸漁業を基幹とするこの村でも、これまでに輩出されていた季節労働がここ数年かなり減少している。椴法華村では、雇用保険の脈絡における季節労働の中でも、一定期間居住地を離れて就労する季節移動労働(=出稼ぎ)が典型であったので、上記調査は季節移動労働を中心として行われた。 まずヒアリング面接調査は、季節移動労働者及び経験者の方たちと、ある村おこしグループを対象として夏に実施した。これまで椴法華村では、漁船の機械化などに伴ってもともとの漁業従事者の職業分化がすすむ中で、漁船を用いて専業的に漁業を営む漁業層と、季節移動労働層(一部は磯漁業と兼業)との二つが柱として存立し、相互関連的に村を支えてきた。それだけに、季節移動労働の減少はこの基盤を揺るがす事態につながっており、調査では村として「八方塞がり」の状態に近づきつつあることが示唆された。さらに、船外機を用いて磯漁業に従事している(た)対象者たちは、経済的・身体的負担などを理由に次世代への漁業の継承に否定的であり、従来の沿岸漁業のあり方が問われている。村漁協の隣接漁協との合併や村の法定合併協移行合意は、以上のような季節移動労働の減少や漁業のあり方の変化と無関係ではないと考えられる。その一方で、一部の対象者には漁業従事者数が昨今の漁獲情勢から判断して適正に近づきつつある(淘汰の結果)との認識もみられ、昨年度までに得られた知見を踏まえ、今後これらの結果を付き合わせて総合的に解釈していく必要がある。 また郵送調査は、これまでの知見と上述のヒアリング面接調査の結果を踏まえて村民を対象に実施された。年末年始にかけて行ったため目下集計作業中であるが、次年度の報告書とりまとめにむけて、鋭意集計・分析作業を続行したい。
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