ホームレス自立支援システムを研究テーマとして、研究を進め、日本における自立支援システムの現状と課題を明らかにした。本研究の一部として、日本との比較において、スウェーデンにおける貧困問題ならびにホームレス自立支援システムの研究を行った。 14年度に引き続き、東京山谷地域のホームレスの実態を把握するとともに、この地域における自立支援システムの整備状況を調査した。数々のNPOやボランティア、旅館事業者、商店街が、東京都および台東区、墨田区、荒川区等の地方自治体と連携を進め、ホームレスの自立支援とインナーシティ化しつつある街の再生のためにプロジェクト展開している様子を調査し、現状の課題を把握した。住のステップアップシステムとして、緊急一時保護シェルター、更生施設、から宿泊所、自立支援センターを経由して、グループホーム、アパート自立、就労自立へといたる流れ図ができたものの、野宿者をステップアップシステムに乗せる入口論と、安定した居住や就労を確保して自立する出口論が課題として引き続き残されていることが判明した。 また、中間施設としての自立支援センターの実績や宿泊所の施設基準や運営内容の不十分さが課題として浮かび上がってきた。そこで、東京都内を代表する宿泊所事業者への訪問調査とヒアリング調査を実施した。これにより、施設の物理的整備基準のみならず、入所中の自立支援と相談のプログラムが充実していることとそうでないところ、対処後の継続的支援を続けているところとそうでないところとの違いも明確になった。 さらに、自立支援システムの構築に関して、日本のホームレス5大都市の行政の取り組みを比較調査した。特に、大阪における取り組みの積極性、川崎市における住民参加型の検討方法などに注目すべき点がみられた。 最後に、スウェーデンにおけるホームレス自立支援システムの調査を実施した。スウェーデンにおいても、NPOが新しい社会福祉事業における先駆性を発揮し、ステップアップシステムを構築しつつある様子を明らかにすることができた。
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