本調査研究は、介護保険下における居宅部門の介護支援専門員(=ケアマネジャー)の業務実態、特にケアマネジメント業務の実施状況を把握し、ケアの質の維持・向上を推進するために介護支援専門員の質的向上、スキルアップへの方策等の開発を探索することを目的に、介護支援専門員の日常業務について一ヶ月間にわたる業務量調査(タイムスタディ)(37ケース)を実施した。ケアマネジメントのプロセスに沿って業務をコード化し、どのような業務を、誰を対象に、どのような方法で、何分行ったかを毎日記録し、業務時間数を算出するものである。その結果、(1)勤務形態でみると、51%の介護支援専門員が他の仕事との兼務であったが、一ヶ月間の総時間数の平均は全体で約191時間37分、最大値は約332時間34分、最小値は約108時間であった。常勤兼務の平均は約211時間で、担当件数(全体平均54.3件)には大きな差はないが、休日日数は常勤専従の2/3であり、業務量(時間数)は明らかに常勤兼務の方が多い。(2)業務の内容別にみると、課題分析、ケアプランの作成、モニタリング等のケアマネジメントの中心的業務において、常勤専従より常勤兼務の方が時間数が多い。またケアマネジメント以外の「その他の業務」は専従・兼務を問わず全業務の約3割と非常に多くなっているが、常勤兼務は約37%を占め、更に割合が多くなっている。(3)全体的にサービス担当者会議が開催されていない、等の主な知見を得た。 また、英国のケアマネジャーの教育・研修では、(1)人々の権利や義務・多様性をpromoteするシステムや構造の開発、維持、評価、(2)個人に最善の成果をもたらすようなサービスの管理・運営、(3)財政資源の活用の管理・運営、(4)チームと個人のパーフォーマンスの管理・運営が、登録マネジャーの資格取得に必須の単位となっている。今後は、タイムスタディの結果を更に詳細に質的に分析し、英国の事情を参考にわが国の介護支援専門員の教育・研修のプログラム開発を進めるとともに、担当件数の削減をはじめとする労働環境の整備も併せて検討することとする。
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