本研究は、東アフリカ・ウガンダ共和国のアルバート湖岸における人と湖の関係を、社会学的に調査し、多民族が共生している漁村において、どのような生活知が生成し、実践されているかを人々の日常生活の場から明らかにした。ウガンダ国における資料収集およびフィールド調査は、平成14年8月および平成16年2月・3月に実施した。 調査対象地域は、1990年代に急速に漁撈活動が活発になった地域であり、西ナイル地域からの移民であるアルル人が住民のほとんどを占めている。移動の理由としては、1998年以降のコンゴの内乱および旱魃による生活困難をあげる人たちが多い。親戚のつてを頼り、湖をカヌーやボートで渡ってこの岸辺の漁村に到着した人がほとんどである。 日常生活における漁撈活動を中心に調査を行い、魚の名前、漁家カレンダー、漁法、漁獲量、労働時間、漁獲の分配方法、魚の加工方法など、日常生活における漁撈活動の実態を明らかにした。季節による変動はあるものの、ナイルパーチやナマズの漁獲は年間を通して安定している。また、平均出漁時間は16時間余りで、出漁時間と漁獲量に相関関係は見られない。漁獲された魚の加工は、塩を使った天日干しが多く、ホイマ県のみならず、西ナイル地域やコンゴ共和国に流通している。こうした経済活動が、一見孤立したこの漁村と他の地域とのつながりを生み出していることが明らかになった。 しかし、こうしたミクロなレベルの漁撈活動が、マクロなレベルの国家政策と齟齬をきたしている。ウガンダにおいて、漁獲資源の輸出額は国内輸出額の第一位であり(2004年)、外貨獲得のための重要な資源となっている。とりわけ18インチ以上のナイルパーチが輸出量の大半をしめていることから、ウガンダ政府はナイルパーチ保護のために、政府は漁業にかかわる条例の変更を繰り返し行い、その変更に対応できない零細漁業を営む漁民たちの活動を封じ込めた。しかし現在、漁民たちは生活を営むための想像力・創造力を駆使し、小魚灯火漁へと方向を転換し、自らの生活を営むようになっている。
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