本研究は、平成12年度に開発した「介護サービス量予測システム」を改良し、個々の高齢者別に必要な介護内容の発生率を示した「介護内容推定表」が自動的に算出される「介護内容推定システム」を用いて介護サービス計画を作成し、さらに、この計画を実行した要介護高齢者の経年的な状態の変化とこの間に計画に基づいて提供された介護給付の内容を分析することを目的とした。具体的には、介護保険制度が実施されてから4年間の要介護認定データと介護給付データを基礎として、システムを用いて計画が作成された要介護高齢者群とシステムを用いなかった要介護高齢者群の2群における介護給付の組み合わせや、両群の要介護高齢者状態別介護給付パターンを明らかにすることとした。 分析の結果、システム利用群と非利用群において介護給付量に顕著な差異はなかった。これは、システム利用群のほとんどの要介護高齢者は、システムが算出した必要な量の介護給付を超えて、介護保険制度で設定された上限支給限度額に応じた介護給付を受けていたためであった。 介護保険施行後、年を経るにしたがって両群とも給付量やその内容は大幅に増加していた。とくにシステムによれば、必要であると算出されなかった福祉用具の貸与や痴呆対応型共同生活介護の利用が増加していた。この傾向は、2003年の介護報酬改定後に顕著となっていた。 よく利用された介護給付の組合わせと要介護高齢者の状態像の変化を検討した結果、要介護高齢者の要介護度は悪化する傾向があった。とりわけ、介護報酬の改定後に通所介護、福祉用具貸与、痴呆対応型共同生活介護といった介護給付を組み合わせて利用する要介護高齢者が増加していたが、これらの複数のサービスを利用した要介護高齢者の要介護度は悪化する傾向がみられた。 これらの結果からは、第1に、利用者は、システムが算出した必要な介護給付よりも多い量を利用する傾向が強く、第2に、その利用量は、必要な量でなく、要介護度による上限支給限度額に影響を受けていることが示された。これは、ほとんどの要介護高齢者が、介護内容推定システムが必要と算出した内容や量より多種、多量の介護給付を受けており、これを受けた者は、結果として悪化している割合が高かったことが明らかにされた。
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