今年度は昨年度に引き続き、教育機関をはじめとする非営利組織におけるマーケティングの適用を提唱したフィリップ・コトラーによる教育機関のマーケティング理論に焦点を当てた検討を行った。具体的には以下の3つの研究課題に取り組んだ。 1)昨年度に引き続き、教育機関におけるマーケティング概念とコトラーの理論の問題点を探るため、今年度はコトラーが展開した教育機関におけるマーケティングの理論におけるマーケティング管理の職務とその組織構造について明らかにした。2)昨年度に考究の対象としたコトラーの「消費者誘導(market-driving)」の論理をいかに教育機関に適用してマーケティングを行うかについて、彼の理論の前提となる消費者行動の論理を手がかりとして考察した。3)コトラーのマーケティング理論が80年代から90年代にかけていかなる進展を遂げてきたかを明らかにし、今後の理論の方向性を探った。 得られた主な成果は下記のとおりである。1)コトラーの理論においてはマーケティング担当者の職務がスタッフ職としての位置づけに留まっていることから、この職務をいかにして責任と権限を持つライン組織に位置付けるかについて検討した。2)学習者の根源的ニーズへの働きかけによりプログラムの採用行動へ学習者を誘導していくなど、ソーシャル・マーケティングの理論を手がかりとした消費者誘導論理適用の方途を検討した。3)80年代から90年代にかけてのコトラーの理論は、顧客がサービスを評価するメカニズムに着目し、顧客の主観的な側面への働きかけを重視した手法を重視する傾向にあることを明らかにして、今後の理論の方向性と問題点を示唆した。
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