研究概要 |
本研究は、日本、英国、米国などの先進民主主義諸国において、連帯と公共性の形成に貢献しうる「生き方としての民主主義」を創造するための教育倫理を、教育哲学における異文化間対話を通じて提言することを目的とする。その指針を与える思想として、デューイ、エマソン、カベルら、アメリカの哲学を流れる「道徳的完成主義」の系譜の意義を探る。 この研究目的に即して、昨年度に続き、本年度も、1)研究成果の出版、2)海外の学会での発表、3)教育哲学の国際交流の三つの領域において、数々の実績を作った。1)に関しては、エマソンの道徳的完成主義が、「声の教育」においてもつ意義を、カベルの映画論に即して論じた論文が、国際誌Educational Philosophy and Theoryに出版された。また、デューイの民主主義哲学が国際理解教育においてもつ現代的意義を論じた論文が、国際的な学術誌、Teachers College Recordに出版された。2)に関しては、2003年9月、ヨーロッパ教育学会において、「エマソンの完成主義、市民性、教育」という英語の論文を発表した。また、日本教育思想史学会において、イギリスの教育哲学者と共に「発達、超越、日常性」という発表を行った。また、2003年12月には、東京大学大学院総合文化研究科21世紀COE「共生のための国際哲学交流センター」とアメリカのデューイセンター共催の国際シンポジウム、「21世紀におけるプラグマティズムと技術の哲学」において、「プラグマティズムとアメリカの超越」という論文を英語で発表した。3)に関しては、2003年6月に、科学研究費補助金を使用し、イギリス教育哲学会の支部会に参加した。また、2)に記した国際シンポジウムにおいては、アメリカやアジアからの研究者との国際交流に従事し、プラグマティズムの今日的意義を明らかにした。 以上の活動に加え、本年度は、法政大学出版局から出版予定のStanley Cavell, The Senses of Waldenの翻訳に従事してきた。また、英語の著作の原稿を完成し、現在Fordham University Pressにおいて審査中である。来年度は、以上の活動に加え、Paul Standish, Beyond the Self : Wittgenstein, Heidegger and the limits of language(法政大学出版局から出版予定)の翻訳を進める計画である。
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