本年度は、昨年度からの作業課題を引き継ぎながらも、以下のような主要課題に取り組んだ。 (1)昨年度から引き続き、教育政策(過程)研究の総括や理論的検討を行った。その本年度の成果の一端は、日本の教育政策(過程)研究に重要な示唆を与えると思われるアメリカの政治学者ロナルド・ショッパ(Leonard James Schoppa)の"Education Reform in Japan -A Case of Immobilist Politics-"(1991)の日本語版出版の作業を進めたことである。本書の意義と日本における教育政策(過程)研究の解説を所収した日本語版が、三省堂から平成16年度中に刊行されることになった。 (2)現在進行している分権改革が、自治体レベルの教育政策にどのような変化と課題を創りだしているのか(或いは、いないのか)に関して、全国幾つかの自治体を対象に継続的な調査研究を進めた。その理論的な課題整理を、日本教育行政学会第38回大会の公開シンポ「市町村教育委員会の可能性」で、「教育行政の『分権改革』の現段階と課題」のテーマで報告した(学会年報30号に掲載予定)し、幾つかの論文としてまとめた(「11.研究発表」欄の拙稿「教育への市民参加と自治体教育行政改革』、等)。また、埼玉県志木市をフィールドにして実施した自治体の教育政策過程に関する調査研究については、その作業の一部を報告書としてまとめている(2004年3月末-4月頃に公表予定)。 (3)今日の分権改革の対象とされている既存の教育行財政制度がどのような構造・特質を有し、いかなるメリット・デメリットを有するシステムであったのか、そのシステム下で教育政策(過程)は、どのような特徴をもっていたのかに関する基礎研究は、成立過程時期の資料探索等(幾つかの県を対象)に留まった。
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