2年目の本研究は、資料収集を継続するとともに、これまで蓄積してきた資料をもとに戦後図書館政策の分析を総合的に行った。 まず、資料収集に関しては、占領初期の図書館政策に大きな影響を与えたCIEの職員P.O.Keeneyの資料が、彼が長らく働いていたモンタナ大学図書館にあることが判明したため、現地で調査を行い、貴重な資料を発掘した。第二に、戦後の図書館政策は占領期にアメリカの影響を強く受けたが、講話条約後、その影響が弱まるにつれて異なった変遷を遂げた。そのなかで、公立図書館政策が1960年代にイギリスの公共図書館実践の影響を受けるようになったことを実証すべく、当時のイギリスの図書館政策の検討を行い、実際にいくつかの公立図書館で資料調査および関係者へのインタビューを行った。 分析作業としては、昨年までに行ったインタビューや学会事務局の資料などをもとに、日本図書館学会の成立の背景とその活動をまとめた。図書館員の養成が大学で行われるようになったことで、図書館学の講座や学科がつくられこれに合わせて学会の必要性が生じた経緯を整理することができた。これは、同学会の後身である日本図書館情報学会の50周年記念誌に研究者両名の共著論文として掲載されている。 また、戦後の図書館サービスのなかでレファレンスサービスが日本に定着しなかった理由を考察して図書館文化史研究会のシンポジウムで報告した。さらに、戦後の図書館史をふまえて図書館サービスの現状を評価する試みとして、『続・情報基盤としての図書館』を刊行し、いくつかの雑誌論文を執筆した。
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