研究課題/領域番号 |
14510270
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
別府 哲 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (20209208)
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研究分担者 |
池谷 尚剛 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (70193191)
辻井 正次 中京大学, 社会学部, 助教授 (20257546)
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キーワード | 高機能広汎性発達障害 / 愛着 / 他者の心の理解 / 自他分化 / 象徴機能 / 軽度発達障害の理解 / 教師による認識 |
研究概要 |
(1)高機能自閉症児1例の、3歳から6歳までの愛着関係、自他分化、他者理解を、多面的観察記録(療育センターでのVTR記録、個別指導記録、保育園と家庭での記録)によって分析・検討した。その結果、高機能自閉症児は、就学前の時期において、愛着行動を示さない時期→道具的安全基地として愛着対象を求める時期→心理的安全基地として愛着対象を求める時期、の順番で発達的に移行することが明らかにされた。これは、従来自閉症の愛着関係の研究でその存在が示されてきた「道具的安全基地」としての愛着関係だけでなく、少なくとも高機能自閉症児の場合、Bowlbyのいう「心理的安全基地」としての愛着関係も形成可能であることが示された。そしてその移行に際しては、「道具的安全基地」としての愛着関係を築いたところで生じる、他者の指示に従う従属傾向が、他者の態度を自分が取ろうとする他者の態度への同一化(Hobson, 1993)に変わること、すなわち自他関係の発達が大きく関与していることが示唆された。この他者の態度への同一化は、自己視点の二重化とも関わっており、象徴機能が成立することと関連していた。他者の態度への同一化は、自閉症児の場合、他者の指示を拒否することとつながっており、その意味で就学前の拒否やそれに伴うこだわり行動、挑発行為の発達的理解や支援に示唆を与えるものである。 (2>学齢期の高機能自閉症を含めた軽度発達障害の理解を、質問紙法で検討した。その結果、軽度発達障害の問題行動が激しくなる要因として、教師は、家庭・環境の問題、教育条件の貧困さ、教師力量の弱さの3つにとらえる傾向があることが明らかとなった。一方自閉症をよく理解している教師は、あまり理解していない教師に比べ、その要因として家庭・環境の問題を取り上げない傾向があることが示され、教師に対する軽度発達障害の理解を促進することの重要性を指摘した。
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