本研究は、わが国の高等教育政策の転換期としての70年代に焦点を置き、同時期にみられた政策転換のプロセスの特性とその意味をさぐるための、基礎的な資料収集・整理の作業を実施することを目的とした。具体的には、1970年代の高等教育に関する審議会等の答申・報告書、その他の政策文書、新聞・雑誌の高等教育関連記事などの資料を収集することに主眼を置いた。特に作業で大きな比重を占めたのは従来ほとんど本格的な分析の対象とされてこなかった国会会議録関連の作業である。これについては委員会レベルの審議状況を、文教委員会のみならずすべての委員会に関して検索し、その結果を整理し、データベース化をおこなっている。とりわけ、高等教育に関する社会的要求を反映していると思われる「請願」に着目し、内容や提出者、紹介議員等の属性を整理し、これもデータベース化した。また新聞記事データベースを活用して、高等教育関連の記事の収集もおこない、主要新聞にあらわれた世論の動向も追った。それらの作業の結果、特に本研究は、まず(1)1970年前後の国会において高等教育に関わるいかなるイッシューが存在したかについての大まかな見取り図をつくることができたとともに、(2)「請願」が必ずしもバランス良く社会的諸要求を反映しているとは必ずしもいえず、いわば偏った「民意」を反映させていること、しかしその反面でそこからはマクロな中央レベルの政策だけではみえてこない、さまざまなイッシューを見出すことが出来ること、等を明らかにすることができた。これらはいずれも、先行研究で包括的に扱われたことがほとんどないものであり、本研究はそこに関しての新たな知見をもたらしたと考える。
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