研究概要 |
本研究は、ジョン・デューイ教育理論の現代的意義を再検討することによって、教育の公共哲学の試論を構築することを目的とする。今年度の研究は3年計画の2年目にあたり、デューイの文化的導徳的探究理論に関する特徴を考察するとともに、その発展的系譜について研究することに焦点を当てた。 具体的には、第一に、彼の公共的政治哲学にみられる相互主観的なかかわりと文化に織り込まれた知性の教育的働きについて検討した。研究成果は,杉浦宏編『現代デューイ思想のその再評価』の「デューイ政治論」として掲載され,相互主観的転回をとげた公共哲学と評価される彼の近隣共同体の民主主義と織り込まれた知性がもつ道徳的役割について考察した。また、目本デューイ学会第47回大会での発表では、織り込まれた公共的知性が個人の経験と文化をつなぐ媒介として教育的な意義をもつことを報告した。 第二に、彼の経験主義的教育理論にみられる文化形成力について検討するために、経験に含まれる反省・制作の働きについて考察した。具体的には、デューイの道徳的想像力について検討するため,越境的想像力という観点から成人と子どもの教育的関係にみられる相互のボーダーを越える学習行為の意義を検討した。また、成人期の経験の成長進化について検討するため、ロバート・キーガンの「進化する自己」の特徴であるシステム交差的経験の可能性について考察した。このようにデューイが展開した道徳的想像力の地平を検討することによって、教育的関係にひそむ道徳的成長のプロセスを明らかにした。
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