研究課題
今年度は3年計画の最終年度にあたり、デューイの平和に関する探究理論の道徳的意義を検討するとともに、わが国の教育改革にとって彼の探究理論がもつ意義を検討した。具体的な研究実績としては、1.デューイの公共哲学の基本概念である「社会的知性」を検討するため、文化的状況のなかで働く「実験的知性」の特徴について考察した。(1)日本デューイ学会第48回大会シンポジウム「デューイの平和論」では、戦争という暴力的方法の使用を避け、国際裁判所による「アファーマティブな司法権」を採用する彼の「知性的平和主義」や「実践的理想主義」の見解を解明した。2.デューイの探究的教育理論の現代的意義について、教育改革や教育実践とのかかわりの観点から研究した。具体的な成果としては、(1)米国ウッドロー・ウイルソン国際研究センター(Woodrow Wilson International Center for Scholars)のアジア・プログラムで、わが国の教育改革の課題として、「創造性」を育成するために日本の文化的伝統に根ざした「探究の型」を身につけることの大切さを指摘した。(2)アメリカ教育学会シンポジウムでは、米国チャータースクールの実験は生徒の学業成績を必ずしも向上させたわけではないが、親・子ども・教師らの参加・対話・協働による学校創りを促進した点で評価されるべきことを指摘し、わが国の教育改革にもたらす影響と問題点について報告した。(3)これまでの研究の総括として、道徳的探究の原点である想像的探究と文化的知性の融合をめざす「越境的探究」にとりくむ「越境型人間」育成の課題について検討した。以上のように、デューイが展開した文化的道徳的探究の地平を検討することによって、彼の教育理論の基本概念である「探究を通じての成長」のプロセスを解明した。
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Asia Program Special Report, Woodrow Wilson International Center for Scholars No.121
ページ: 14-17
日本デューイ学会紀要 45号
ページ: 97-105