研究課題
基盤研究(C)
本研究は、デューイの教育理論における公共的道徳的探究の展開およびその現代的系譜について検討することにより、彼の「経験の再構築」を現代における「越境的想像力による自己の進化」という観点から読み直し、さらにそれを現代教育改革の流れのなかに置くことにより、「教育の公共理論」を構築することを目的とする。1年目は、デューイの社会的葛藤解決理論と教育理論との関係について検討するため、戦争をめぐる論争における彼の「知性的平和主義」で展開された社会的道徳的見解を解明した。また、デューイの経験的成長の見解に立脚して、反省と制作との協働作用をつうじて状況に織り込まれた知性をみずからの身につけるための自己形成のプロセスについて考察した。その過程は、H.ジルーの提唱する「越境する自己」とも共通する要素がみられることを究明した。2年目は、デューイの教育理論と政治理論とが輻輳する領域に焦点を当てて、民主主義の具体化として彼が主張する「近隣の共同体主義」におけるコミュニカティブな探究のはたす役割について検討した。また、越境する自己の具体的事例としてR.キーガンの「進化する自己」を取り上げて、異なる自己システムを包摂しながら成長するシステム交差的経験の過程を「越境的想像力」の視点から検討した。最終年の3年目は、デューイの知性的平和主義についての特徴を究明するために、戦争という暴力的方法を回避することを理想としながらも、それを断念せざるをえなかった彼の道徳的知性による方法の限界について再び論究した。また、現代教育改革との関連で、多様な価値観や要求が錯綜するなかで、他者の経験や文化を採り入れることを可能にする越境的想像力が子どもや若者の道徳的成長に不可欠な手段であることを提唱した。
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日本デューイ学会紀要 第45号
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Asia Program Special Report (Woodrow Wilson International Center for Scholars) No.121
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Journal of Japan John Dewey Society Vol.45
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