本研究では、関西地域における高等女学校を対象として、女学校時代の家庭や学校での生活や文化の特徴、卒業後の友人関係や活動の実態などについて質問紙調査を軸に分析し、それに基づいて学校経験を共有することの意味や、その延長上にあるネットワークのもつ機能について考察した。具体的には、神戸地域・京都地域、滋賀県湖北地域の公・私立高等女学校10校の卒業者(昭和9〜18年卒)約3500名に対する質問紙調査を実施し、その結果と、それに基づくインタビュー調査、さらに同窓会誌や個人の日記・手紙類などの文献・資料を分析の対象とした。 その結果、家庭の文化的背景と学校文化と融合しながら独自の文化として形成されていった女学生文化が、授業を中心としながらも友人関係や読書、趣味などを通して形成されていったこと、それらが卒業後も女学校時代の友人とのネットウークを通して維持されていることなど、いくつかの共通の特徴が見出されることなどが明らかになった。特に女学校時代につくられる友人関係は独特のものであり、そうした特徴は女学生文化に独自のものであると同時にメディアを通して流通していた少女文化とも重なる部分があることも推測された。さらに、そうした共通の女学生文化を基盤として、都市部-地方、アカデミック志向、女性文化志向というた軸による学校タイプによっていくつかのグループに分かれること、卒業後のネットワークの強度もそうした学校タイプによって異なることなど、学校タイプによる差異についても分析し、そうした差異を形成する背景や要因について考察した。
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