本研究は、高等女学校の教育や生活に焦点をあて、その文化の内実を実証的に明らかにすることによって、女子学生の教養や学問観とそれを支えてきた文化の水脈にあらためて光をあてようとする試みである。具体的には、関西地域(兵庫県、京都府、滋賀県)にある高等女学校10校を対象に、女学校時代の家庭生活、学校生活、卒業後の生活の3つの領域についての質問紙調査、面接調査を実施し、その結果についての分析を軸にしながら、学校史等の文献資料、学籍薄、手紙・日記類などの資料の分析を合わせて行なった。 そのなかで、フォーマルな学校文化のなかだけでなく、読書や趣味、稽古事などを通して幅広い教養に親しんでいたことや、それらを支えていたのが女学校での同級生や上・下級生を含む親密な友人関係であったことなどが、地域差や学校差を超えて女学生に共通の文化として見出された。一方でより詳細に分析すると、地域、公立・私立といった学校タイプ、あるいは生徒の家庭背景などによって、それぞれ異なった傾向も見出された。さらに、それらの要素が重なり合って、いくつかの女学生文化のサブタイプが存在することも抽出された。そうした文化類型の特徴のちがいと、学校の教育方針や教育理念が重なりあって、独自の校風が生み出されていくのである。このような文化の共通性と差異は、卒業後も同窓会などのネットワークを通じて維持され続けている。
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