最終年度の課題として、参与観察をしている公立高校の学校内部の力学を捉え、高校生の意識構造を捉える仮設概念として、生徒の側からの「せぶみ」と学校の側からの「ならし」を設定した。 「せぶみ」は、制度理解と作動様式の推し量りとの構造化した意識であり、「ならし」は、学校の側からの学校的制度様式へのとりこみである。この相互の力学がはたらく「場」としては、広く私学を含む「学校関係」から「公立高校空間」「個々の学校空問」「生活世界」と多様にとることを試みた。 同様の問題構成から、複数校における意識調査を実施した。ここでは、「広い学区」と「複数校受験」との関係についての吟味をおこない、そこには多様な意味付けと学校生活への展望が構成されていくことが判明した。 本年度の研究成果については、2004年8月日本教育学会において、「学校空間と生徒の生活意識-参与観察による学校診断その2-」として発表し、2005年6月の日本教育経営学会「参与観察による学校診断(その3)-中等教育制度の総合的地域設計に向けて-」でも報告する予定である。 これとともに、本研究の成果として、2005年3月に、『地域社会と学校区モデル研究成果報告書』を刊行した。 本研究の今後の課題としては、生徒や親の制度意識の分析と、それに対応する高校通学区域の制度設計、および高校-大学の接続についての価値志向の関連構造をさぐってゆく課題がある。ここでは、少子化社会における、多様な価値を許容しうる中等後教育の設計を課題することになるであろう。
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