本年度は、都道府県と市レベルの学校財政にかかわる実態を探ることを目標として研究を進めてきた。都道府県については各都道府県教育委員会のホームページ等で得られる情報などをもとに、都道府県独自の取り組みについて調査した。中でも少人数指導や少人数の学級編制にかかわる教職員配置の取り組みの中で、独自の財政措置を活発に進めている山形県など、第7次定数改善計画に触発されて、地方独自の政策理念による新たな動向が見られた。学校財政制度の改善を考えるうえで貴重な示唆を得ることができた。また市レベルでの学校財政制度の実態を把握するために、すべての市を対象にアンケート調査を行った。調査では、学校の財務にかかわる制度がどのようになっているのかを正確に把握することを目的として、市長部局に対する予算要求の手続き、教育長、課長、校長の契約行為に係る専決事項、教育委員会内での予算編成や学校への予算配当の手続き、学校裁量にゆだねられる予算の有無などを尋ねている。詳細な分析はまだ完了していないけれども、おおよその制度の概略を把握することはできた。実態としては、市の財政規模とのかかわりで一律ではなく、かなり多様な実態となっていることが明らかとなった。例えば専決事項についてみると、教育長や校長の契約行為に係る専決事項が定められていないところもあり、また定められているところでも、その金額には相違が見られる。このような多様な実態を踏まえつつ、学校改善につながる財政制度のあり方を今後検討していく必要がある。次年度では、市レベルの学校財政制度を分類するとともに、類型ごとにその制度のあり方を事例的に研究を進めていく予定である。
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